特色GP選定「〈音楽家の耳〉トレーニング教育法の開発」

本学の取組「〈音楽家の耳〉トレーニング教育法の開発-総合的音楽能力育成を目指す教育システムの開発と実践-」が平成19年度文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に選定されました。※「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」とは、文部科学省が平成15年度より開始した、大学教育の改善に資する種々の取り組みのうち特色ある優れたものを選定し、財政支援などを行う公募事業です。特色GPの詳細につきましては、下記をご覧ください。

「〈音楽家の耳〉トレーニング教育法の開発-総合的音楽能力育成を目指す教育システムの開発と実践-」
【取組の概要】
この取組は、長年、音楽基礎教育として実施されてきたソルフェージュ教育を発展させ、日本及び諸外国での教育研究の成果を活用して、音楽の実践に必要な総合的音楽能力の育成を目指す教育システム(=<音楽家の耳>トレーニング)を新たに開発し、平成14年4月以降、音楽学部の「ソルフェージュ」及び「音楽理論」他の授業科目において実践してきたものです。中世から現代までの実際の音楽作品を用い、「瞬間的に音を捉える」能力の育成を目指し、音楽を「耳」で捉えてすぐに反応する「オーラルトレーニング(Aural Training)」を数多く行います。単に音程、リズムだけではなく、音楽の表情や構造・形式、様式までも「耳」で瞬時に捉え、即座に反応できるように訓練します。子どもにも対応可能な初歩から、大学以上の高度な段階に至る14グレードに分かれた本システムの開発に際しては、初めに基本となる教科書を執筆し、その後『指導の手引き』、補助教材、DVD、CD等を順次作成して、普及活動を行っております。

エリザベト音楽大学編『<音楽家の耳>トレーニング』(Part1、Part2)春秋社、2002年7月

エリザベト音楽大学編『新版<音楽家の耳>トレーニング』(Part1、Part2)春秋社、2008年9月

学習者および指導者が、各グレード別にどのようにこのシステムの教育に取り組むべきかをわかりやすく解説した手引き、DVD、CDを発行、作製し、無償で配布
エリザベト音楽大学〈音楽家の耳〉トレーニング無料配布資料 請求シート(PDF)

【<音楽家の耳>トレーニング」教育法の開発】
「<音楽家の耳>トレーニング」は、平成14年にエリザベト音楽大学で開発された、音楽の基礎教育システムです。初心者から、音楽を専門的に指導している上級者までを対象とした14のグレードからなり、グレードごとに段階を追ったトレーニングを行います。音楽を学ぶとき、最も大切なことの一つは「音楽的な耳」を養うことです。
「<音楽家の耳>トレーニング」は、音楽家にとって必要な耳を育てる内容になっています。

これまでの、楽譜を中心に据えたトレーニングは、文章の読み書きにより外国語を学ぶことに似ています。つまり、読み書きの訓練だけでは、実際的な会話を含めた総合的な語学能力が育たないように、読譜練習のみに頼る従来の方法では本当の「音楽的な耳」を育てることは困難です。
「<音楽家の耳>トレーニング」では、これまで、音楽的な耳を育成するための専門的なトレーニングとして行われてきた読み書き中心の「ソルフェージュ」に加えて、体験的に音楽の実践に必要な総合的音楽能力の育成を目指しています。ソルフェージュと音楽理論を別々に学ぶだけではなく、一体化させて学ぶことによって、音楽の表情や形式、様式までも耳で捉えられる総合的な能力を育成します。例えば、和声の進行を理論でのみ捉えるのではなく、「耳」でも捉えることは、楽曲分析、伴奏付け、編曲を行う際に非常に重要です。

【「<音楽家の耳>トレーニング」教育法の特色】
この「<音楽家の耳>トレーニング」システムには、3つの大きな特色があります。
特色1: 中世・ルネサンスから現代に至る音楽作品を教材として使用
特色2: 「オーラルトレーニング」を重視
特色3: 初心者から専門家のレベルまで網羅

特色1:実際の音楽作品を教材として使用する。

本システムで使用する課題は、そのほとんどが実際の音楽作品の中から採用されています。音程とリズムの練習のためだけに作られた無味乾燥な課題ではなく、優れた音楽作品を用い、耳のトレーニングを行うことによって、音楽全体を捉える力をつけます。
また様々な音楽に親しむことによって、学習者の音楽性を豊かにし、同時に音楽様式をも身につけます。

特色2:オーラルトレーニング(Aural Training)を重要視する。

音楽家にとって必要な『耳』とは、音の高さやリズム、そして音楽の表情や流れを「瞬間的に」捉えることができる耳です。そこで、視唱・聴音などの楽譜の読み書きの練習のみに偏るのではなく、音楽を『耳』で捉えてすぐに反応し、表現につなげるトレーニングを行います。

特色3:初心者から専門家のレベルまで網羅する。

また、音楽経験に関わらず、様々なタイプの学習者にも対応可能です。

【「<音楽家の耳>トレーニング」教育法の授業への導入】
「<音楽家の耳>トレーニング」システムは、エリザベト音楽大学の全学生が必修科目として受講しています。また、選択科目としても位置づけています。

【学生による評価】
(1) 音楽作品を課題に用いていることへの評価「単旋律の聴音のみでなく、室内楽、オーケストラの作品なども課題にとりあげられるので、音程、リズムの間違いのみを指摘されるのではなく、曲全体の構造・形式の面から具体的に指摘されるためその後の自習に活かすことができた。」
(2) オーラルトレーニングに対する評価・「日頃から注意深く音楽を聴くようになった。」・「音楽を聴く時も演奏する時も、拍子、リズム、フレーズに対して敏感になった。」・「実際の音楽作品を課題に用いているので、手元にあるCDなどを用いて積極的に自習ができる。」・「音楽全体の響きを捉えるトレーニングをするので、専門実技を演奏する際に旋律のみに注意して演奏するのではなく、調性、和声進行も意識して耳を傾けながら、演奏するようになった。」
【「〈音楽家の耳〉トレーニング」特色と有効性】
「〈音楽家の耳〉トレーニング」教育法は、総合的音楽能力を育成するためのシステムであるので、このシステムを使用して学習するために、特別に課題を用意する必要はありません。手元にあるCDなどの音源、あるいは、専門実技で取り組んでいる曲も、課題として用いることができます。
このシステムで得た総合的音楽能力は、専門実技を演奏する際におおいに活かすことが可能です。

【選定理由】
従来のソルフェージュ教育を見直し、新たに「音楽家の耳」トレーニングシステムを開発し、音楽教育に全面的に取り入れた画期的取組です。平成12 年のプロジェクト開始以来7ステップにわたって取組をすすめ、15 年度の本プログラム不採用後も補助材料、手引き、視聴覚教材の開発など努力を積み重ねてきました。生きた音楽に親しみ、同時に様々な音楽様式についての感覚を養うことをベースとし、「子どもにも対応可能な初歩から、大学以上の高度な段階に至る14 グレードに分かれた」システムの開発は、高く評価されます。
音楽教育の成果は、短期間に実るものではなく、時間をかけて評価する必要があります。学生時代の成果、幼児期から導入した場合の成果など、短期・長期の成果をどのように評価するか引き続き研究が望まれます。また、本取組が「大胆な試み」だけに、第三者の評価を受けることが期待されます。

■特色GPの活動について
報告書作成『平成19年度文部科学省 特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)「〈音楽家の耳〉トレーニング教育法の開発」-総合的音楽能力育成を目指す教育システムの開発と実践-平成19年度~21年度 活動報告書』(2010年2月27日)

エリザベト音楽大学「〈音楽家の耳〉トレーニング教育法の開発」成果報告会(2010年2月27日・28日)

国際シンポジウム「〈音楽家の耳〉トレーニング-新たなソルフェージュ教育に向けて-」(2008年9月14日・15日)

■補助教材について

資料名内容
指導の手引き グレード1~8を中心に
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指導の手引き グレード1~8を中心に
付録 トレーニングに有効な教材使用例一覧表
〈音楽家の耳〉トレーニングが、これまでのソルフェージュの教育システムと違うので、どう指導して良いか戸惑っている、という現場の指導者からの声にお応えする手引きです。グレード1~8の「学習内容」「課題項目と指導上の留意点」「トレーニングに有効な教材例」の3点について説明しています。
項目別学習・指導の手引きⅡ
グレード1~8を中心に
グレード1~8で行う項目を取りあげて、その項目を学習、指導する際の注意点を項目ごとに記しています。各々の項目に「項目の目的と内容」「学習上、指導上の留意点」「トレーニングチェック表」の3つが記されています。
視唱の手引き
歌いながら学ぶ グレード2~5を中心に
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視唱の手引きⅡ
歌いながら学ぶ グレード2~5を中心に
グレード2~5の「伴奏付き視唱課題」の学習方法について説明しています。グレードごとに「楽譜を読むためのアドヴァイス」、「歌った後のチェック表」を記しています。また、1曲ごとに「作品の分析」として楽典的知識を、どのように演奏に反映させるかについても解説しています。
音楽の表情と形式の理解の手引き
音楽の流れの中で学ぶ楽典 グレード2~6
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音楽の表情と形式の理解の手引きⅡ
音楽の流れの中で学ぶ楽典 グレード2~6
グレード2~6を対象に、従来の音楽基礎教育ではあまり取りあげることのなかった、楽譜を見ずに音楽(実際の音楽作品)を聴き、その表情を捉える項目を取りあげています。ピアノ曲を用い、この項目の「学習上・指導上の留意点」のほか、音楽を耳のみで捉えることと楽典の知識とを結びつけるアドヴァイスを記しています。
音楽の表情と形式の理解の手引きⅢ
『〈音楽家の耳〉トレーニング』テキストの課題を用いてグレード2~6
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音楽の表情と形式の理解の手引きⅣ
『〈音楽家の耳〉トレーニング』テキスト グレード7~10の課題を用いて
これまでの『音楽の表情と形式の理解の手引き』2冊に続き、2008年度にテキストがCD付の改訂版『新版〈音楽家の耳〉トレーニング』(全2巻、春秋社)として出版されたことに伴い、この項目の「学習上・指導上の留意点」のほか、音楽を耳のみで捉えることと楽典の知識とを結びつけるアドヴァイスを記しています。テキストの課題曲を取りあげ、テキストで示されている出題以外に可能な出題内容を提案しています。
「リズムパターンをたたきながら真似して歌う」
グレード3~5の手引き
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「リズムパターンをたたきながら真似して歌う」
グレード3~5の手引きⅡ
従来の音楽基礎教育ではあまり取りあげることのなかった「リズムパターンをたたきながら真似して歌う」の学習方法について説明しています。「課題実施のためのアドヴァイス」「チェック表」のほかに作品の分析を行い、実際の演奏に反映させるためのアドヴァイスを記しています。
オーラル トレーニングCD 〈音楽家の耳〉トレーニングを学習しようとする際に、特に独習が難しい項目をピアノで演奏し、CDに録音したものです。
「視唱の手引き」「音楽の表情と形式の理解の手引き」「課題CD」 補助教材「視唱の手引き」「音楽の表情と形式の理解の手引き」「音楽の表情と形式の理解の手引きⅡ」で課題に取りあげた全作品が収録されています。
課題実施体験DVD 〈音楽家の耳〉トレーニング検定試験(グレード5・6)の模様をご覧いただけます。

 【お問い合わせ先】
エリザベト音楽大学 〈音楽家の耳〉トレーニング研究所
エリザベト音楽大学 学事部企画
Tel:082-221-0918(代) Fax:082-221-0947
e-mail:kikaku01@eum.ac.jp